東京から山梨へ移住した理由

「なんでわざわざ山梨へ?」
まだまだコロナが都市伝説のように扱われ、マスクも品薄状態になる前。
2019年上旬、移住する決意を話すとほとんどひとはネガティブな印象を抱いた。
左遷、島流し、東京に疲れた、お金がなくなった、心が病んでいる等々。
最初は誤解がないよう丁寧に移住する本意を説明していたが、
「要は東京に疲れたからでしょ?」
と長々やまなしの魅力と移住目的を語ったのにもかかわらず、なにひとつ頭に入っていないかのように要約した人がいたおかけで、以降同じ質問をされたら人をみて回答を変えていた。
・キャンプと登山が好きだから。
・家賃が安くて景色のいい処に住みたいから。
・自然が多いし東京に近いから。
・新しい環境で生活してみたいから。
・地域創生に興味があるから。
どれもほんとだけど、移住を決意した真意は違う。
いつかまた同じ質問が来たらこの記事に飛ぶQRコードを見せれば済むように。
わたしが東京から山梨へ移住した理由を順を追って説明します。
寿命を意識した
30代。人生の折り返し地点。周りがどんどん身を固めていって、いつまでも元気だと思っていた親が徐々に衰え始めてようやく、自分ももう若くない(今更)と気づく。そしてなんとなく、少し遠い将来を意識して想像する。
70歳。頭の回転も記憶力も体力も今より断然低く、できなくなることも増えてくる年齢。
仕事はしてるかな。結婚して子ども、孫はいるかな。まだまだ性欲は衰えず現役かな。そんなことはなさそうだな。
そもそもいま抱いている夢や願望を、40年後同じように欲しているかどうかもあやしい。他人から尊敬されたいとか、人の注目を得たいとか、自己顕示欲なども徐々に薄れていくのかな。今思うと20代の頃は強く「成功したい!」「モテたい!」と願っていたけど現在はどうかな。
そんなことをよく三宿で朝まで飲み歩き二日酔いで夕方まで起き上がれない中考えていた。
強い欲望も歳をとると変化する
『将来は田舎でのんびり暮らしたい』漠然とこんな将来設計描くひといません?
その"将来"になったとき同じように望んでいるかどうかもわからないのに。
もし定年後に、いざ移住しようと思っても重い腰を持ち上げるほど行動力が備わっているかもわからないし、親の介護や自身の健康状態もあって、したくてもできない環境下にいるかもしれない。そもそも齢をとってからのほうが利便性が高く車を必要としない東京に住む利点が多くなるんじゃないかーー
いま抱く願望を大切にしよう。
昔はそんな事望んでたなあと遠い目で空を仰ぐ前に。
手足が捥れる前に。
こんな事を考えているうちに漠然とした移住計画の輪郭が徐々にはっきりしてきた。
制限があるからこその幸せ
徳島に移住した地元の友人宅に1週間ほど泊まった。家族5人。犬2匹にニワトリ2匹と亀1匹。夜は電気に頼らず、火はガスに頼らず、ただ必要最低限に文明の利器に頼る。便利、とは程遠い生活なのに満ち足りていて、人間は本来こういう生活でいいんだと。「足るを知る」という言葉をこのときはじめて知る。
スローなライフに一時憧れ、本気で高知に移住することも考えたが同時に「利便性は捨てきれないしもう少し繁華街であそびたい…」と煩悩を捨てきれない自分もいた。
足るを知りつつ自身の抱く欲望も大切にしたい。
自らに制限を課すことで達成する歓びや解放感が増すことに気づいたのも同じ頃。ストレス下に長くいればいるほど解放されたときに飲むビールは美味しく感じるし、サウナだって暑さに我慢するからこそ水風呂が気持ちいい。ゲームもハードモードでクリアするから達成感が味わえる。
東京にいて毎晩呑んだくれる日々もいいが、週末オンリー、と制限がある方がより特別感もあってメリハリもあり楽しく感じるはずだと思い、東京から、否、欲望から距離を置くことを望むようになる。(普通は毎晩飲まないし距離を置かずともただ控えれば...)
予測できない未来
老後自由な時間が多くなる頃には、欲望は枯れ果てる。若いうち仕事に追われている間は、欲望を疎かにする。いま抱く欲望を永遠のものと勘違いしていた。
趣味趣向、好きな食べ物や異性のタイプだって歳を重ねると変化することがある。
世界はますます加速して変化している。20年前はまだなかったyoutubeもいまではテレビより視聴時間が長く、いまでは自分の分身となるスマホなんて、発売当初、所持していた人を少し小馬鹿にした感じもあった。
コロナ前は移住に対してネガティブな印象を抱く人も最近では「オレモイジュウシタイ」と手のひらを返す始末。
20年後はどうだろう。
よりシームレスに繋がる世の中になるのか。逆に情報統制され"閉じた世界"になるのか。日本はまだあるか。国家という制度は存在してるか。男女の違いや、もしかしたら生きてるか死んでいるかだって重要じゃなくなっているかもしれない。
いまなにがしたいか。どんなふうに生きたいか。
定年退職後(約30年後)いまと変わらず日本の片田舎にて「のんびり暮らしたい」と思うだろうか。平日は自然に囲まれながら仕事をして週末は登山やキャンプ、または東京へ出向いて友人と遊ぶような2拠点生活に憧れを抱いていないかもしれない。
予測できない未来。どんな世の中になっているかも、自分がどんなものに惹かれているのかもわからない。それならいま、憧れを抱いているうちに行動しよう。
まだ30代。もし移住して肌に合わなかったとしても拠点を移せばいいし、また東京で生活したければ戻ればいい。実はそんな軽い気持ちだったり。